シュウ酸噴霧による最適なダニ対策 前半
スイスのベルヌにある、Agrocope研究所の養蜂研究センターが発表したレポート
"Application optimale d'acide oxalique par evaporation"(シュウ酸噴霧による最適なダニ対策) 著者 Anton Imdorf, Jean-Daniel Charriere, Rolf Kuhn
を翻訳しました。
時機を得たヘギイタダニ対策は、ミツバチの群を上手く越冬させるために欠かせない。言い換えれば、8〜9月のギ酸もしくはティモール(オルタナティヴな対策)によるダニ対策でダニの数を80%以下にまで減らしておく必要がある。そうでなければ、数は増加し、ダニが繁殖しすぎるとチヂレバネウィルス(DWV)及び急性麻痺ウィルス(1)を撒き散らす可能性がある。こうしたウィルスが冬の間に最も多くの群を消滅させるということが最近の我々の研究(未発表ではあるが)により明らかになった。
シュウ酸処理を繰り返すこと
少し前から、シュウ酸処理を複数回にわたって行うだけでほかのダニ対策を何もしない養蜂家がでてきている。表1をみてわかるように、蜂児がいる状態でのシュウ酸噴霧では、ダニの数に対して十分な影響を与えることができない。群に蜂児がいなくなる11月のシュウ酸処理まで実際のところおびただしい数のヘギイタダニがコロニーにはいるのだ。こうしたことが、冬のコロニーにウィルスなどの問題を引き起こしているのである。
表1シュウ酸処理後の、ヘギイタダニの平均落下数
巣箱No.1,2,3については、いずれも一回目のシュウ酸噴霧処理を9月の初めにおこなった。死んだダニの数を数えると、対策はうまくいったような印象を受ける。しかし、10月末もしくは11月上旬の2回目のシュウ酸処理後に落下したダニの数を見ると、一回目のシュウ酸処理が十分でなかったことがわかる。
結果として、冬のみつばちは大量のダニに寄生されることになった。蜂場4では、9月末に一度だけ処理を行ったが、こちらも同様にダニの寄生率は非常に高かった。蜂場5については、Apilife VAR(ティモール)を使った処理が遅く、平均的な結果となった。ティモールでの処理は遅くとも8月中旬には行っていなければならなかった。最終的な目標は11月のダニの数を500以下に抑えることだったが、7群中4群には600~760匹のダニがいた。
もしダニの数が8月初旬ですでに多い場合には、十分な数のダニを減らすため間隔をあまりあけずに複数回にわたって処理をする必要がある。表2の二つの例は、シュウ酸滴下の処理を行った結果であるが、1回目と2回目の処理の間で相当数が増え、効果が不十分であったことを示している。結果として、蜂場1では、寄生率が非常に高くなり、秋口にはミツバチの群が大打撃をうけ、10月初めにはすべての群が消滅することになった。Horst Erfurt(3)は、大量のダニに寄生された群は8月に4回にわたりシュウ酸噴霧処理をおこなったにもかかわらず、11月上旬のダニ処理の後にも500匹以上が落下したことを示した。
表2シュウ酸滴下を3回に分けておこなったが、ヘギイタダニの平均数は十分に減らなかった。データは、1997年(2)に行った研究結果である。
ダニの自然落下数は処理後2週間の間にみつかったダニの数。(1日あたりのダニの数)
**弱群になり、蜂群が崩壊した。
どのような形であれ、シュウ酸処理を繰り返すのは、たいへんな作業である。しかも、春のはちみつにシュウ酸が蓄積する可能性はまのがれない。今日までに発表され、シュウ酸の残留について書かれたすべての研究は、無卵期の使用にもとづいていて、そういった意味では、はちみつへのシュウ酸の残留はない、つまり、はちみつの自然発生的な含有量の増加はあるものの、不自然なシュウ酸の増加はないと証明されている。しかし、無卵期ではない時期に何度もシュウ酸を使用した場合のはちみつへの残留については研究が行われていない。
すべての養蜂家は、みつばちの群の健康に責任がある。冬越しのために大切なのは、可能な限り早くダニの数を減らしておくことである。11月のシュウ酸噴処理の際に一つの巣箱で500匹以上のダニが落下してはならない、もっと言うと、平均して200~300以上の落下がないように巣箱を管理しておく必要がある。
文献
(1) Allen M.F,, Ball B.V. (1996) The incidence and world distribution of honey bee viruses. Bee World 77 (3)
(2)Imdorf A., Charrière J.D.(1998) Comment faire face à la recrudescence des Varroa résistants? Revue Suisse d'apiculture 95(5) 157-161.
(3)Erfurt H. (2005) Die Wirkung der Oxalsäure in Völkern mit Brut. Bienenwelt 47 (6) 26-27
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